【映画】 そこのみにて光り輝く
田舎の生活
小学校、中学校、高校が一緒で、横のつながりが強く、先輩後輩の縦のつながりも強い。社会に出ても、先輩後輩のつながりはなくならず、身動きがとれなくなり、息苦しい生活が続く。もちろん、そういう関係から助けられることもある。が、だんだんと、なぁなぁとなり、ばれなければ何やってもいいという事が横行する。
そんな田舎が舞台のこの映画は、バラック小屋に住み、言葉もままならない寝たきりの父親や、パチンコしかしない義母や保護観察中の弟を支えるために、水商売で働く女性と、過去に職場の事故で同僚を亡くし逃げてきた男性の話。
最底辺の生活を、諦めている女性と過去の事故のトラウマから抜け出せない男性が出会い、お互いを必要とし、自分の意思でどうしようもない現状から抜け出そうとして一歩前に進む。だからこそ、光り輝くラストシーンが美しい。
そこのみにて光り輝くのは、この場所でしか輝けないのか、この場所から輝くのか。それは映画を観て判断してみてください。
俳優について
主演女優の池脇千鶴は、正統派美少女から本格女優になった感がつよい。彼女しか出せない雰囲気やしぐさ、表情はこの映画にぴったり。主演女優賞も納得の演技。
弟役の菅田将暉も天真爛漫で表裏がない感じがよく出てて、だからこそあるシーンの鬼のような表情に凄みがでている。この映画のベストシーンの一つ。
演出について
言葉での説明ではなく、シチュエーションを細かく積み重ねることで、状況がわかりリアリティが出ている。たとえば、
- 冒頭の家のシーン。冷蔵庫にやかんををそのまま入れ、麦茶を冷やしているとか、フライパンのままチャーハンを食べる。
- 自己紹介する時も、下の名前ではなく、丁寧に「佐藤です」と言う事で、地元の人間じゃないという事を表す。
- 季節外れのアジサイを握りつぶす。
- 雑草を鉢植えし、生活のために売っていたがその花が枯れてるシーンが出てくる。家族のため生活のためじゃなく、これからは自分のために生きるという暗示。
- お祭りのシーンで、楽しそうな家族がたくさん映っているのに、どうしようもなく不幸になる感じ。
など。日本映画はセリフが少ないけれど、こういう演出を重ねることで主人公の心情が心に深く刺さってくる。また、各シーンの音楽がすばらしい。
宇多丸さんもベストサントラ賞に選んでますね。
「そこのみにて光輝く」ライムスター宇多丸師匠の映画時評 - YouTube
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