泡沫で儚い記憶

あなたの幸せが ずっと、ずっと、つづきますように。 小さな砂粒があつまって、 大きな岩になるほどに。 その大きな岩の表面に コケが生えるほどまでに。

【読書】 邪魔 / 奥田英朗(著)

 

奥田英朗さんの「邪魔」を読みました。2002年の第4回 大藪春彦賞受賞作です。同年の「このミステリーがすごい!」国内2位の作品です。奥田英朗さんは「空中ブランコ」「イン・ザ・プール」というちょっと変わった精神科医の短編集が好きで、そこから興味を持ちました。

 

あらすじ

・上巻

及川恭子、34歳。サラリーマンの夫、子供2人と東京郊外の建売り住宅に住む。スーパーのパート歴1年。平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。恭子の心に夫への疑惑が兆し、不信は波紋のように広がる。日常に潜む悪夢、やりきれない思いを疾走するドラマに織りこんだ傑作。(講談社文庫)

 

・下巻

もうどこにも、逃れる場所はない。2002年版「このミステリーがすごい!」第2位、第4回大藪春彦賞受賞。九野薫、36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。放火事件では、経理課長及川に疑念を抱く。わずかな契機で変貌していく人間たちを絶妙の筆致で描きあげる犯罪小説の白眉。(講談社文庫)
(角川書店公式HPより)

 

この小説は3人の視点が章で分かれていて、それぞれが一人称で語られています。つまり3人の心情がダイレクトに伝わる構成になっています。奥田さんの小説は、細かいディテールを積み重ねて、リアルな感情を丁寧に綴るのが特徴です。そのことによって、ストーリーだけ読めばあり得ないと感じることでも、説得力が増し、共感につながっていきます。

 

主人公の一人の及川恭子は、一戸建てに住む主婦で子供が二人いてパートに働きに行っています。そんな恭子がだんだんと壊れていく様は、読み進めていくうちに狂気に変わっていきます。刑事の久野も最初の印象とかけ離れていきます。

 

この本は犯罪小説と呼ばれるものだけど、犯罪に至る心理がおもしろくて、悲しい。それぞれの主人公にとって、「邪魔」なものはなんだったんだろうと考えているけれど、答えが出ない。ラストはスカッはいかないけれど、読んでいる最中はどんどん先を読みたくなる傑作だと思います。

 

 

邪魔(上) (講談社文庫)

邪魔(上) (講談社文庫)

 
邪魔(下) (講談社文庫)

邪魔(下) (講談社文庫)