泡沫で儚い記憶

あなたの幸せが ずっと、ずっと、つづきますように。 小さな砂粒があつまって、 大きな岩になるほどに。 その大きな岩の表面に コケが生えるほどまでに。

【読書】 「本陣殺人事件」 横溝正史著  ネタバレ無し

中学生の頃から推理小説が好きで、アガサクリティ、エラリークイーンなどを読んでいました。東西ミステリーベスト100を読んでは、次に読む小説を探したり、うんちくにうなずいたうなずいたりしていました。

 

そんななかで、唯一読まず嫌いだったのが、日本の推理小説です。あらしずを読んでも、日本独特の陰気臭さと村社会に嫌悪していたせいかもしれません。しかし人間は歳をとると、食べ物の好みが変わったり、嗜好品が変わるといいます。そのせいか最近は日本の推理小説も読むようになりました。でも積極的な理由ではなく、アガサクリスティやエラリークイーンの小説をほとんど読んでしまい、かといて最近の推理小説は好みに合わなかったりする消極的な理由です。


試しに読んでみた、横溝正史の「八つ墓村」が思いの外面白く、一気に彼の世界に引き込まれました。今回読んだ「本陣殺人事件」は、日本の名探偵金田一耕助が初めて登場する作品となっています。


【あらすじ】

 

昭和12年(1937年)11月25日、岡山県の旧本陣の末裔・一柳家の屋敷では、長男・賢蔵と小作農の出である久保克子の結婚式が執り行われていた。式と披露宴は、賢蔵の妹・鈴子が琴を披露するなどして何事もなく午前2時前にお開きとなった。


その2時間ほどのち、明け方に近くなった頃、新郎新婦の寝屋である離れ家から悲鳴と琴をかき鳴らす音が聞こえてきた。父代わりに克子を育てた叔父の久保銀造らが雨戸を壊して中に入ると、賢蔵と克子が布団の上で血まみれになって死んでいた。しかし離れ家内には死んだ夫婦以外に誰もおらず、庭の中央には血に染まった凶器の日本刀が突き立っているほかには、披露宴終了直後に降り出して積もった雪の上にも犯人の逃げた跡がなかった。銀造は名探偵と見込んで自らが出資している金田一耕助が偶然家に遊びに来ていたので、彼を呼ぶ。 

 https://ja.wikipedia.org/wiki/本陣殺人事件

 

この本は、「東西ミステリーベスト100」の国内部門の代10位になっています。

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隙間が多い日本家屋での密室殺人。魅力的な探偵、金田一耕助。戦前の村社会による習慣と驚愕の動機。

確かに発表年数が古く、今の小説ほど洗練されていませんが、それがまた山間の薄暗い雰囲気にマッチしています。作品中にある探偵と登場人物の海外古典ミステリーの密室談義は思わずニヤニヤしてしまします。ミステリーを読み込んだ人でも、多分引っかかるので、最後まで読んでから再読すると、作者が注意深く書いてあるのがわかります。

 

この本は他に2篇の短編小説が載っていますが、こちらもドロドロとした雰囲気の中でスカッとする名推理と現実的な論理が、あなたをきっと虜にするでしょう。

京極夏彦や北村薫が好きな人にもおすすめです。

 

 

本陣殺人事件 (角川文庫)

本陣殺人事件 (角川文庫)