泡沫で儚い記憶

あなたの幸せが ずっと、ずっと、つづきますように。 小さな砂粒があつまって、 大きな岩になるほどに。 その大きな岩の表面に コケが生えるほどまでに。

【読書】 「対岸の彼女」 角田光代著

 

 

【あらすじ】

いじめで群馬に転校してきた女子高生のアオちんは、ナナコと親友になった。専業主婦の小夜子はベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始める。立場が違ってもわかりあえる、どこかにいける、と思っていたのに……結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、たったそれだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。女性の友情と亀裂、そしてその先を、切なくリアルに描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。

 

誰にでも、やらなかった後悔というのはあると思う。あのとき、こうすればよかったと思うのはその時の正解がわからず、一歩踏み出す勇気がないためだ。やるかやらないかの選択で、その後の人生が大きく変わることもある。

 

主人公の小夜子は、小さい頃から勇気の一歩を踏み出せず、誰々ちゃんのようになりたいと思っていた。小夜子の子供もそんな自分に似て、砂場や保育園で仲間に入れずイジイジしている。もう一人の主人公の葵は勇気の一歩を踏み出せる人だ。大学卒業後起業し、ベンチャー会社を経営している。対象的な二人が出会うことで小夜子の生活や心情に変化が現れる。川を挟んだように違う人生を歩んできた二人は、ある過去の出来事をきっかけに心の奥底にある鈍い痛みを共有していく。

 

なんでも他人の言いなりだった小夜子が葵と関わるようになり、少しずつ自分のやりたいこと、言いたいことを主張していく。その勇気が彼女を変えていく。

やらなかった人生とやってしまった人生。どちらも正解はない。ただ、未来は今立っている場所が出発点であり、どう選択するかは自分次第。そこに正解はないのなら自分の選択に自信をもって歩んでいきたい。

 

 

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)