【読書】 「八つ墓村」 横溝正史著 「祟りじゃ〜っ! 八つ墓の祟りじゃ〜っ!」
「悪魔の手鞠歌」につづき、横溝正史の「八つ墓村」を読みました。この物語も何度もドラマや映画になっています。残念ながら見たことはないのですが、頭に懐中電灯を角のように2本刺し、日本刀と猟銃で暗闇を駆け回り、村人を殺害する映像だけは記憶にあります。それだけインパクトが強いのでしょう。「祟りじゃ〜っ! 八つ墓の祟りじゃ〜っ!」のCMはあまりにも有名です。
あらすじ
戦国の頃、三千両の黄金を携えた若武者が、七人の近習を従えてこの村に落ちのびた。だが、欲に目の眩んだ村人たちは八人を襲撃、若武者は「七生までこの村を祟ってみせる」と叫び続けながら、七人とともに惨殺された。
その後不祥の怪異があい次ぎ、半年後、落人殺害の首謀者、田治見庄左衛門が家族・村人を切り殺し、自らの首をはねて死ぬという事件が起こった。この事件の死者が八人出たことで、村人は恐怖のどん底にたたき込まれた。村人は落武者の怨念を恐れ、犬猫同然に埋めておいた八人の死骸をとりだすと、八つの墓をたて、明神として祟めることにした。以来、この村は“八つ墓村”と呼ばれるようになったという―。
大正×年、田治見庄左衛門の子孫、田治見要蔵が突然発狂、三十二人の村人を虐殺し、行方不明となる。それから二十数年、謎の連続殺人事件が再びこの村を襲った…。
この物語は3つの大量殺人が書かれています。一つ目は村名にもなっている戦国時代8人を襲撃した事件。二つ目は要蔵が突然32人を殺害した事件。三つ目が本編となる、多治見要蔵の息子、辰弥が二十数年ぶりに八つ墓村に戻ってくる事から起こる大量殺人です。
この物語は多治見要蔵の息子、辰弥の視点から書かれているため、最初から辰弥が犯人でないことが示されています。神戸で父親のことを知らず暮らしていた辰弥が、父親が大量殺人を起こした村へ帰るということは、村独特の習慣や雰囲気を客観的に書く上で、非常に重要なことだと思います。村民が辰弥のことを忌み嫌い、段々と集団ヒステリーになっていく様は、現代のホラー小説よりも優れています。
辰弥視点で書かれているため、金田一耕助の活躍はあまりありません。しかも推理して、未然に殺人を防ぐと言うこともなく、最後の種明かしのために登場している感じです。しかし、おどろおどろしい雰囲気や、父親が殺人犯ということを辰弥が苦悶するくだり、鍾乳洞の冒険、いろいろな女性との恋沙汰など、物語としても非常におもしろいです。
青年成長物語としても一級品で、ホラーや推理小説としても一級品、ページをめくる手がもどかしいくらい面白い小説です。こんなに面白い本が古本屋で100円で買えるなんてコスパ良すぎて幸せです。まだ読んだことがない人は是非。
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 1971/04/26
- メディア: 文庫
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