泡沫で儚い記憶

あなたの幸せが ずっと、ずっと、つづきますように。 小さな砂粒があつまって、 大きな岩になるほどに。 その大きな岩の表面に コケが生えるほどまでに。

【読書】「夜光虫」 馳 星周著

 

 

世界名作を読もうと思って「カラマーゾフ兄弟」を数ページで中断。お気楽な本を読んでみました。ところが全然お気楽ではなく、暗黒の奥底に沈んでいくような話でした。

 

【あらすじ】

日本プロ野球から台湾リーグに移った俺は、日本にある数億の借金を返済するため、八百長に手を貸す。台湾の野球は台湾ヤクザによって八百長が横行していた。

ある試合で八百長をした俺は、八百長に手を貸した選手や関係ない選手とともに対話に台湾ヤクザに拉致された。彼らはまだ台湾ヤクザの恐ろしさを知らなかった。

 

日本を追われ、台湾で台湾ヤクザとの抗争に巻き込まれる男の話です。馳 星周は「不夜城」で新宿を舞台にした中国マフィアの話でデビューしましたが、今回は台湾が舞台となります。主人公の加倉昭彦が台湾に来たもう一つに理由が、幼いときに離婚した母親と弟が台湾へ移住したらしい、二人を探すことにもありました。

 

2つの台湾マフィアから板挟みにあう俺。殺人事件の容疑者と野球の八百長がバレ追い詰められていきます。不夜城の場合は主人公が賢くうまく立ち回りましたが、この本は感情的に行動する主人公が何をしでかすかわからず、先が読めません。「こいつを黙らせろ」 と頭の中で響く声に怒り、目の前の人間に暴力をふるいます。

 

こういった主人公なので、整合性はなく、突発的でジェットコースターのように話は進んでいきます。後先考えずに起こす行動は読み手をドキドキさせますが、全体にまとまりがありません。主人公の過去と周りの人たちの過去がつながったときに、話はますます混沌とし、暴力的になります。段々と行き場を失っていく主人公。突発的につながる点と点。行方不明の母と弟の現在。過去の血が今を苦しめていきます。

 

穏やかな日常とは違う刺激的な世界を経験したいのならばぜひ読んでみてください。

 

 

夜光虫 (角川文庫)

夜光虫 (角川文庫)